耳は大きく、外耳・中耳・内耳に分かれています。
外から耳を見ると、鼓膜の奥に部屋があります。
この部屋を中耳と言い、風邪をきっかけに鼻をすすったりすると、
中耳に菌が入り膿が溜まり、鼓膜を圧迫することで痛みが発生します。
そして、この部屋は鼻の奥と管で繋がっています。比較的、子供に多く見られますが、大人でもかかる場合があります。
菌は、耳の外側からではなく、鼻の奥から入ってきます。
よく言われるお風呂や、プールの水が入ったことが原因になることはありません。風邪がきっかけで増えた細菌やウイルスが耳へ入って中耳炎を起こします。
中耳炎は、急性中耳炎と慢性中耳炎があります。
急性中耳炎が、3ヵ月以上治らない場合は慢性中耳炎となります。
急性中耳炎が治った後に、浸出液が溜まったままになることがあり、これを滲出性中耳炎と言います。特に子供に多く見られます。
急性中耳炎 | 滲出性中耳炎 |
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熱や、痛みを伴い鼓膜の中に溜まった液(耳漏)が出てくる。 | 痛みはほとんどないので、発見されにくい。 |
【症状】 耳痛・発熱・難聴・耳鳴・耳漏 |
【症状】 耳閉感・難聴 |
小さいお子様は、免疫力が低いので風邪を引きやすく中耳炎になりやすいです。1歳までに、気づかない場合もありますが、ほとんどみんな1度は中耳炎になります。しかし5歳を過ぎると、だんだん耳管が発達するので、中耳炎にならなくなるお子様が増えてきます。
また、耳管の出入り口に、アデノイド(咽頭扁桃)が肥大することが原因で、鼻と耳の空気の道が狭くなり、中耳炎を引き起こす可能性があります。
*アデノイドとは?
鼻と喉の間にあるリンパ組織(鼻の突きあたりの部分)で、咽頭扁桃ともいいます。2歳から5歳で最も大きくなり成長していくにつれて、アデノイドは委縮していきます。
このアデノイドが鼻や喉に様々な症状を引き起こします。
小さなお子様は、痛みなどを訴えることが難しく、機嫌が悪くなったり、耳を触っていたり、夜眠れていない、夜泣きが続くなどの兆候を示します。耳痛を訴えず、発熱のみの場合もあります。
早めの耳鼻科受診をお勧めします。
滲出性中耳炎と言って、鼓膜の奥にある部屋に膿が溜まったままになると耳の聞こえが悪くなります。子供のころに聞こえが悪くなると、言葉の発達に影響するので早めに治療する必要があります。
滲出性中耳炎を何度も繰り返す方を対象に行う治療方法です。
鼻から耳管(じかん:鼻と耳をつなぐ管)に空気を送ることで耳管の機能障害が改善されると言われています。
患者様のお耳と先生のお耳を管でつなぎます。
通気管というものを鼻に入れ、耳管に空気を送ります。
ポリッツェルというものを使用し、「破裂音」のある単語を発声するタイミングで鼻から空気を送ります。
*破裂音とは…
「ガッコウ」「ラッパ」「キック」「ラッコ」など小さな「つ」の含まれるもののこと。
急性中耳炎の多くは、発熱や耳の激しい痛みが生じることが多いです。
その他にも、難聴・耳鳴・耳漏などの症状が出ることもあります。
鼻処置を行いながら、抗生剤や抗アレルギー剤などの内服や、点耳薬を使って治療を行います。症状や鼓膜所見によっては鼓膜切開を行うことがあります。
滲出液が中耳にたまる事によって耳閉感や難聴などの症状が起きます。急性中耳炎のような耳の痛みや発熱などの症状がほとんどなく発見されにくいことが特徴です。
子供であれば、耳をよく触ったり、テレビの音量が大きくなるなどの反応から滲出性中耳炎がわかることがあります。
中耳にたまった滲出液を減らすために、鼻処置を行いながら、抗生剤や抗アレルギー剤の服用や鼻から耳に空気を送る通気治療をします。内服や通気治療でも治りにくい場合は中耳にたまっている液を抜くために鼓膜を切開したり、その後の経過によっては鼓膜にチューブを留置を行うこともあります。
もっとも多く見られる症状は耳漏と難聴です。炎症が増悪するとめまい・耳鳴り・頭痛・まれに顔面神経麻痺などが起こることもあります。
抗生物質の服用・点耳薬、中耳の洗浄などで炎症をコントロールします。
多くの場合はこれらの治療により耳漏は止まります。しかし、鼓膜に穴が開いている限りは耳漏を繰り返すことが多いため、完全に耳漏を止めるには、穴を塞ぐための手術が必要になることがあります。その際は大きな病院に紹介させていただきます。
主な症状は難聴と耳塞感などですが、癒着の程度がひどくなると耳垢や感染が生じ、耳漏が出ることもあります。
症状が軽いうちであれば、それ以上悪化させないように抗アレルギー剤や抗生剤の服用・通気治療などを行います。
難聴の症状が強い場合には、手術が必要になることがあるため、大きな病院に紹介させていただきます。
主な症状は耳閉感・耳の痛み・耳漏・発熱・めまい・吐き気などです。
これらの症状を何度も繰り返す場合もあります。
鼻処置(鼻汁の吸引)をおこないながら、抗生剤・抗アレルギー剤の服用、および点耳薬などで治療を行います。
治療しても改善されない場合は鼓膜切開が必要になることがあります。また、鼓膜切開をしても繰り返し中耳炎を起こす場合は鼓膜チューブの留置を行うことがあります。
中耳には、耳小骨といって、音を伝える小さな骨があり、真珠腫性中耳炎になると、この耳小骨を溶かして破壊してしまうことがあり、聴力障害を起こすことがあります。
また進行すると顔面麻痺やめまいなどの症状を起こすこともあります。
真珠腫性中耳炎の治療は手術で行うことがほとんどです。
ごく初期や程度の軽い場合には、通院で経過を観ていくこともあります。
その場合には、抗生剤の内服や点耳薬の投与や通気治療を行います。
難聴症状を生じる場合もあるが、それ以外で初期には自覚症状に乏しく、耳垢を取るときや、3歳児健診時、滲出性中耳炎の治療で耳鼻科を受診し偶然発見されることが多いです。
他の真珠腫と同様に手術での摘出が必要となります。
後天性真珠腫に比べると進行は遅いのですが、放置すれば徐々に大きくなって骨を破壊していくので早期に手術を行って完全に摘出することが大切です。
耳の痛みや、発熱はありません。
中耳に膿が長期間留まるため、鼓膜が肥厚したり鼓膜の裏面や、中耳粘膜が炎症を起こし、厚く腫れることもあります。
抗生剤の投与や、鼓膜切開を行う場合が多くありますが、それでもなかなか改善しない場合は、中耳内を換気するために鼓膜チューブ留置をすることもあります。
軽症な場合は耳閉感・軽い耳の痛みなどの症状がおこりますが、風邪症状や鼻副鼻腔炎などがあると、急性中耳炎や滲出性中耳炎を引き起こし、症状が長引いたり、激しい痛みやめまい、耳鳴りの症状が現れる場合もあります。
軽症な場合は飴をなめる・ガムを噛む・水を飲む・唾を飲み込む・あくび・耳抜きをすることで症状が改善されることが多いです。それでも症状がなかなか改善されない場合は速やかに病院を受診してください。
病院では、耳管から中耳に空気を通す、通気治療を行うことが多いです。
中耳炎の診断の際は、鼓膜所見だけではなく、現在の状態を把握するために、聴力検査やティンパノメトリー検査を行うことがあります。
聴力検査は防音が施された検査室で音が聞こえたらボタンを押していただく検査なので、乳幼児には正確な検査が出来ないことが多く、大きい病院の幼児難聴外来などに紹介し、そこで検査することもあります。
5歳・6歳になるとほぼ正確な結果がでるようになります。
ティンパノメトリー検査は鼓膜の動きをみる検査です。イヤホンのような機械を耳に入れて、鼓膜に圧をかけるので少し鼓膜の圧迫感はありますが、痛みはほとんどなく、小さいお子さんでも検査できます。鼓室に滲出液がたまっていると、鼓膜の動きが悪くなり、正常な波形はでなくなります。